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2024/10/21
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～ちんどん屋～続編
話は随分前へと遡りますが、
私がこのホームで働き出して
直ぐのことでしょうか。
ずっと、ずっと気になっていた事がありました。
私と同じイニシャルの入居者様。
C様の話です。
私から見たC様の印象はもの静かで
あまり多くを語らない。
そして誰にでも平等に優しく、聞き上手
たまに見せてくださる笑顔が素敵で
とても心が美しい 入居者様です。
私が出会った頃には車椅子での
生活をされていた状態でしたが
現在よりも言葉数も多く、
意思疎通も
はっきりとされていたように思います。
限られた時間の中で
私達、職員に何が出来るのか。
「何かしてみたいことはありますか？」
「何か食べたい物はありますか？」
そう尋ねても、
「無い。」とおっしゃられ、
結局はっきりとした返事は
返ってきませんでした。
そんなC様がいつも歌っている歌がありました。
「ラーラーラーラーラーラーラーー
ラーラーラララーー。」
同じワンフレーズを何度も繰り返し
歌っておられました。
ずっと、ずっと
この歌の曲名が気になっていました。
歯磨きの時も、ご飯の時も、
暇になってしまった時も、
眠そうな時も、返答に困った時も。
楽しい時も。
そして消灯後の居室からも・・・
どんな時も
この歌を口ずさんでいらっしゃいました。
今の時代、曲名さえ分かれば簡単に
曲を探してその曲の続きが
聞かせてあげられる。
”聞いて欲しい”と、何度も思い、
「何という曲名ですか？」
「どんな歌詞でしたか？」
「続きはどんなメロディーですか？」
と、C様に何度も、尋ねました。
その全ての問いに対しC様は、
「わからない」といつも答えました。
何人の職員が同じ質問をしたことでしょうか。
それは、どの職員が尋ねても同じ回答でした。
その歌がどうしても知りたい私は、
スマホに自分で歌ってみる事で
曲を探し出せるツールで調べたり、
音階にしてみて
似たような曲を視聴してもらったりもしました。
が、結果惨敗。
あ！歌ってる！これか！と思い
「この曲がいつも歌っている曲ですか？」
と尋ねるも
「知らない」との事で
全く手がかりが掴めないでいました。
私にできる手段を色々と試してはみましたが
これ以上はお手上げ。
この曲がこの世に存在するかも不明確で、
いつしか探す事すらなくなっていました。
そんな中の大利根名月座様の来所。
音楽が好きなC様ではありますが
いつも通り静かに座っておられました。
そんな中聞こえてきたあの曲・・・
職員「ラーラーラーラー、、、、
「？？・・・私は何故この曲を知っている？？」
前奏以外、いや歌詞すらも、全くわからない。
”いつ聞いた曲だろう・・・？”
が、何故かこの歌を知っている・・・
そんな事を考えながらふとC様を見ると
先程までじっと座って居たC様が
自分の限界まで手を上げ、全身を揺らしている！
(あぁ！そうだったんだ！)
と、思いC様に尋ねる。
「この歌ですか？！」と。
C様はまん丸と目を見開き
「うん！！！」
と大きな声で答えてくださったのでした。
心なしか目が潤んでいる様にも見えました。
この時、入職してからずっと分からずにいた
答えにやっと出会えたのでした。
大利根名月座様が来所されて数日
「荒城の月」を流すと、C様は
体を大きく動かし歌われます。
体操の前に曲を流すと、
力が湧いてくるのか
体操の動作が以前より
良くなったように感じます。
私の気のせいかもしれませんが・・・
話が長くなってしまいましたが、
大利根名月座様の公演がなければ
あの曲の答えは今も、分からないまま。
地域交流の大切さをあらためて感じた
出来事になりました。
こういった素晴らしい出来事に
出会える事は極めて、僅かで
“この仕事を続けていて良かった”と
再認識させてくれた
私の中でも忘れられない出来事になりました。
大利根名月座様
本当に貴重な経験をありがとうございました！！
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