2021/08/11
介護
もくじ
「親が認知症になった」「近い将来に家族の介護が必要かもしれない」と不安を感じる方は多いです。
しかし、親の介護に対して、「具体的に何をすべきかわからない」という方は多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、
・親の介護方法
・親の介護にかかる費用
・親の在宅介護でストレスを感じた時の対処法
・介護施設の種類
・親の介護で起こりやすいトラブルなど、「親の介護をする上で必要となる知識」について詳しく解説していきます。
親の介護が必要になったとき、「どのような方法で介護するか?」について考えましょう。
親の介護方法は、大きく以下の3つに分けられます。
・在宅介護
・遠距離介護
・施設介護
どのような選択肢があるか理解することで、スムーズに準備を進められます。
親の介護方法1つ目は、「在宅介護」です。
在宅介護とは、自宅で親と一緒に住みながら介護をすることを指します。
・デイサービスへの通所
・ホームヘルパーによる介助支援
上記のような居宅介護サービスをお願いする場合も、自宅が中心のため在宅介護に該当します。
在宅介護は施設への入居費等が不要なため、金銭的な負担は少ないです。また、住み慣れた自宅で両親を見守れるので安心感もあります。
ただし、身体的な負担が多くなったり、仕事へ影響が出たりと、介助者へのデメリットが生じやすくなります。
親の介護方法2つ目は「遠距離介護」です。
遠距離介護とは、別居している親と一緒に住まず、休日の訪問や介護サービスの利用で支援する方法です。
在宅介護と異なり、24時間体制で見守る必要がなく、介助者の身体的・精神的な負担は少なくなります。
ただし、遠距離のため「トラブルにすぐ対応できない」「交通費や介護サービスの費用が多くかかる」といったデメリットがあります。
親の介護方法3つ目は、「施設介護」です。
施設介護とは、有料老人ホームや特別養護老人ホームといった介護施設に入居し、介護士や看護師によるサービスを受ける方法です。
・認知症や介護保険制度に詳しい介護士がいる
・介護に必要な設備が整っている
・緊急時の対応も安心
・家族がゆとりを持てる
プロの介護士に任せることで、さまざまなメリットが得られます。
しかし、「入居費や利用料がかかる」「自分で介護しないので罪悪感を覚える可能性がある」といったデメリットも生じやすいです。
親の介護にかかる費用について、平成30年に行われた「公益財団法人生命保険文化センター」の調査結果は以下のようになっています。
・介護費用(月額平均)…約7.8万円
・一時費用の合計…約69万円
出典:公益財団法人生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査
〈速報版〉」
介護費用は、公的介護保険サービスの自己負担を含めた金額です。多くの家庭で月5~8万円ほどの費用がかかることがわかります。
なお、一時費用とは、車いすの購入や住宅改修工事といった「一時的に必要な介護費用」です。調査結果では「掛かった費用はない」という方も15.8%いました。
また、介護方法でみると「在宅介護」は平均費用より安く済むケースが多いです。一方、「遠距離介護」では交通費、「施設介護」では入居費やサービス利用料が多くかかる点に注意しましょう。
在宅介護では、主に以下のようなストレス・課題が発生しやすいです。
・身体的、精神的な負担が長期間続く
・休みがないためリフレッシュできない
・介護に時間を追われ、働くことができない
これらのストレスを軽減するために、必要な対処法を解説していきます。
介護でストレスを感じたときの対処法1つ目は「介護から離れる時間を作ること」です。
責任感が強い人ほど「自分がしっかりしなくてはいけない」と介護に没頭してしまうことが多いようです。介助者自身が身体的・精神的な負担に気づかずに体調を崩してしまうこともあります。
そのため、意図的に「自分の時間」を設けるようにしましょう。自分の時間とは家事や仕事だけでなく「やりたいこと」「趣味や友人との交流」に費やす時間を指します。
介護を忘れる時間を作り、定期的にリフレッシュすることが重要です。
介護でストレスを感じたときの対処法2つ目は「周囲に相談すること」です。
「親のことだから」とひとりで解決しようとすると、ストレスをため込んでしまい、心身ともに負担がかかりやすくなります。
そのため信頼できる親戚や知人に相談し、ひとりで悩みをため込まないようにしましょう。
どうしても周囲の方に相談するのが難しい場合は、地域包括支援センターや市役所などの窓口に相談することも重要です。
介護でストレスを感じたときの対処法3つ目は「各種介護サービスの利用を検討すること」です。
介護保険制度にある公的サービス以外にも、現在は民間サービス・ボランティアからさまざまなサポートが受けられます。
主な介護関連サービスは以下のとおりです。
・在宅サービス(訪問介護、訪問入浴など)
・通所サービス(デイサービス、デイケアなど)
・食事宅配サービス
・安否確認サービス(見守り、緊急通報など)
・家事代行サービス
・介護施設のボランティア利用
・住宅改修
・福祉用具のレンタル
上記のように、さまざまなニーズに応えるサービスが提供されています。
まずは居宅介護支援・居宅予防支援(ケアプランの作成)といった相談サービスを活用し、自分や親に必要なサービスを厳選できるよう情報収集しましょう。
介護でストレスを感じたときの対処法4つ目は「介護施設への入居を検討すること」です。
「働けない」「介護が原因の腰痛が治らない」「自分の時間がないので気が滅入る」といった介助者特有のストレスは、介護を続ける限り尽きない問題です。
しかし施設へ入居することによって、介助者の負担を大きく減らすことができます。
まずは介護職員やケアマネジャーといった「介護のプロ」に相談し、負担を和らげられるか検討してみてください。
介護施設にはさまざまな種類があるため「どの施設に入居すればいいの?」と不安を感じる人は多いと思います。
そこで、ここからは「介護施設の種類」について費用や入居条件・サービス内容を紹介します。
介護施設の費用目安は以下のとおりです。
施設名 | 入居一時金(円) | 月額利用料(円) |
介護付き有料老人ホーム(※) | 0~数億 | 15~35万 |
住宅型有料老人ホーム(※) | 0~数億 | 15~35万 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数百万 | 10~30万 |
グループホーム | 0~数十万 | 15~30万 |
特別養護老人ホーム | なし | 6~15万 |
ケアハウス(軽費老人ホームC型等)(※) | 数十万~数百万 | 15~30万 |
※特定施設に指定されている場合、月額利用料は自己負担1割
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間サービスは、運営方針や設備・サービスの充実度によって費用が大きく変わります。
介護付き有料老人ホームは、食事・排せつ・入浴といった身体介護や、家事援助などのサービスを幅広く受けられる介護施設です。
ただし入居の際に、施設によっては高額な入居一時金を必要とする施設も多い点に注意しましょう。
住宅型有料老人ホームでは比較的自立した高齢者が対象です。
見守りや食事・清掃・洗濯といった生活援助サービスを受けられます。
また、多くの施設が「60歳以上」を入居条件としています。ただし、場合によっては年齢制限のない施設もあるなど、入居条件は施設によって異なるため情報収集が必要です。
サービス付き高齢者向け住宅は、生活相談や安否確認サービスが受けられる高齢者向け住宅です。
「60歳以上」「要介護認定を受けた60歳未満」といった条件があり、賃貸借契約で入居する場合が多いです。
グループホームは「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれており、要支援2以上の認知症高齢者を対象としています。
少人数で共同生活を送りながら、認知症の進行を和らげることを目的としている施設です。
また、住み慣れた地域で過ごすことを重視しているため「施設と同一の市区町村に住民票がある」という入居条件がある点に注意しましょう。
特別養護老人ホームは、在宅での生活が難しい高齢者を対象とした施設です。具体的には「要介護3以上」が入居条件となっています。
主なサービス内容は、食事・入浴・排せつ・レクリエーション・清掃・洗濯などです。
介護保険が適用されるため、費用が安く、原則的に終身まで入居できます。
ケアハウスは、自宅での生活が難しい高齢者が安価に食事・洗濯などのサービスを受けられる施設です。
生活に不安のある60歳以上を対象とした「一般形ケアハウス」と、「65歳以上かつ要介護1以上」を対象とした「介護型ケアハウス」の2種類があります。
特に介護型ケアハウスでは、入浴・排せつ・リハビリといったサービスを受けられます。そのため、要介護度が上がっても退去の必要がないのが特徴です。
親の介護をめぐって発生しやすいトラブルは以下の2点が多いようです。
・(兄弟姉妹との)役割分担
・費用面
トラブルが深刻化する前に対応できるよう、それぞれ詳しく見ていきましょう。
兄弟姉妹が複数人いる場合「誰がどのくらい介護を担うのか?」という役割分担でトラブルが生じやすいです。
十分な話し合いがないまま、ひとりに負担が集中してしまうこともあります。
このような介護の押しつけが生じる原因は「介護への準備ができていない」「兄弟姉妹で意思疎通をとっていない」という2点です。
そのため、できるだけ早い段階で「もし親の介護が必要になったらどうするか?」という話し合いの機会を設けましょう。
「兄は金曜と土曜」「妹は日曜と祝日」といった形で役割分担し、身体的・精神的な負担が偏らないよう工夫することが重要です。
介護にかかる費用が親の貯金を超えた場合、費用面のトラブルが発生する可能性もあります。
介護が長引いて金額が大きくなると「誰がどのくらいの割合で負担するのか?」という不安が生じます。
さらに、家庭の有無や経済状況によって兄弟間に差が生まれ、不満につながるケースも多いです。
また遺産相続といった問題もあるので、費用面の分担については早めに話し合うよう努めましょう。
親の介護が必要になったら、できるだけ早めに「どのような介護方法があるのか?」「どのような介護サービスがあるのか?」といった情報を収集してください。
その情報をもとに「親が求める生活」と「自分が求める生活」のバランスを考えて、自分に合った介護方法を考えていきましょう。
突然の介護には不安が付き物です。介護施設や地域包括支援センターなどに相談し、ひとりで抱え込まないよう工夫することも重要です。