大切な家族に認知症介護が必要となったとき、「グループホーム」への入居を検討する方は多いです。
しかし「他施設との違いがわからない」「料金が高いのでは?」といった不安から、入居に踏み切れないという方もいると思います。
そこで本記事では、認知症対応型グループホームを選ぶ際に知っておきたい内容について詳しく解説していきます。
・グループホームの特徴や選び方
・グループホームと有料老人ホームの違い
・入居までの流れと注意事項
グループホームならではの特徴や、他の介護施設との違いを理解し、入居後に後悔することのないよう情報収集していきましょう。
グループホームとは?
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは、一体どのような施設なのでしょうか?
・グループホームの特徴
・グループホームの入居条件
・グループホームのサービス内容
・グループホームの1日のスケジュール
以上4つの視点で、グループホームについてわかりやすく解説していきます。
グループホームの特徴
グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活する介護施設です。
グループホームの定員は「ユニット」と呼ばれる単位で表されます。1ユニットの人数は5~9名ほどで、最大3ユニットが上限です。
少人数の高齢者が自立した生活を送れるよう、1日のスケジュールに工夫が施されているのもグループホームの特徴です。
・認知症の高齢者が入居対象
・認知症ケアの知識と経験を豊富に持つ職員が常駐
・家庭的なケア
・少人数での日常生活に近い環境
上記のようなグループホームならではの特徴を押さえ、自分やご家族に合うか判断していきましょう。
グループホームの入居条件
グループホームの入居条件は以下のとおりです。
・要支援2もしくは要介護1~5以上の認定を受けていること
・認知症の診断証明書を持っていること
・入居を希望する施設と同一の市区町村に住民票があること
グループホームに入居するには、要支援2~要介護5までの認定が必須です。65歳以上であり、医師から認知症の診断を受けていることが条件となっています。
また施設と同じ市区町村に住民票がないと、グループホームに入居することはできません。
グループホームは地域密着型サービスに属しており「利用者が最期まで住み慣れた地域で生活すること」を目的のひとつとしています。
民間企業であるグループホームが医療機関や家族・NPOなどと連携しながら、地元での生活を維持できるよう、サービスを提供していることが入居条件に影響しているのです。
グループホームのサービス内容
グループホームの主なサービス内容は以下のとおりです。
・食事、入浴、排せつなどの身体介護
・買い物や調理、掃除、洗濯などの生活援助および見守り
・機能訓練(リハビリ)
その他、以下のようなサービスもあります。
・レクリエーション
・地域との交流、イベント参加
「入居者自らが家事を行う」「地域との豊富な交流」などは、他の介護サービスにはない内容です。
介護専門スタッフが24時間常駐するなかで、安心して日常生活を送れるのがグループホームならではの特徴といえるでしょう。
グループホームには看護師の配置が義務付けられていません。
医療行為の範囲や緊急時の対応は施設によって異なります。気になる場合は施設に直接問い合わせてみましょう。
グループホームの1日のスケジュール
グループホームの1日のスケジュールは、入居者に合わせて日々変わります。
今回は参考として、グループホームの主な1日の流れを見ていきます。
7:00 |
起床・トイレ |
7:30 |
配膳および朝食 |
8:00 |
口腔ケア(歯磨き)、服薬 |
8:30 |
バイタルチェック |
9:00 |
自由時間(入浴やレクリエーションなど) |
11:30 |
トイレや配膳 |
12:00 |
昼食 |
12:30 |
口腔ケア(歯磨き)、服薬 |
13:00 |
自由時間 |
15:00 |
おやつ |
17:30 |
トイレや配膳 |
18:00 |
夕食 |
18:30 |
口腔ケア(歯磨き)、服薬 |
19:00 |
自由時間 |
21:00 |
就寝 |
実際は上記のように決まったスケジュールで動くことは少ないです。
たとえば「今日は体調が優れないから入浴をしない」「天気がいいから散歩したい」など、利用者やその日の状況に合わせて、臨機応変に対応しています。
・睡眠
・食事
・水分摂取
・歯磨き
・排せつ
・入浴
・服薬
・レクリエーション
・バイタルチェック
上記のような「日常生活に必要不可欠な介助」を中心に、グループホームのスケジュールが組み立てられています。
グループホームのメリット
ここからはグループホームのメリットを4つ紹介していきます。
・認知症ケアに特化している
・少人数でアットホームな雰囲気
・有料老人ホームに比べて低価格のケースが多い
・長年住んできた地域に住み続けられる
他の介護施設とメリットを比較検討できるよう、それぞれ詳しく見ていきましょう。
①認知症ケアに特化している
グループホームのメリット1つ目は、「認知症ケアに特化していること」です。
グループホームは、要支援2~要介護5に該当する認知症の高齢者が入居対象となっています。
そのため、入居対象者に合わせて認知症ケアの経験が豊富な職員を要するグループホームは多いです。
介護福祉士やケアマネジャーといった専門資格をもつ職員が、一丸となってサービスを展開しています。
自立を目指して必要なサービスを提供できるのは、グループホームの大きなメリットと言えるでしょう。
②少人数でアットホームな雰囲気
グループホームのメリット2つ目は、「少人数でアットホームな雰囲気」です。
利用者数が多い大規模施設では利用者の対応に追われ、慌ただしい雰囲気になりやすいです。
一方グループホームでは少人数のユニットケアを実現しており、落ち着いた雰囲気の中、生活を送ることができます。
また、少人数ゆえに他の入居者や職員と顔なじみになれるのもメリットです。安心できる環境のなかでレクリエーション等を行うことが、認知症の進行防止に繋がります。
なお、グループホームでは個室が用意されています。あくまで「個人の尊厳は守りつつアットホームな雰囲気である」という点を押さえましょう。
③有料老人ホームに比べて低価格
グループホームのメリット3つ目は、「有料老人ホームに比べて初期費用・月額利用料が低価格であるケースが多い」です。
グループホームの料金は、大きく分けて以下の2つで構成されています。
・初期費用(入居一時金、保証金)
・月額利用料
初期費用は賃貸住宅でいう「敷金」のようなものです。そのため一般的には、退居時に一部が返金されます。
また月額利用料は、大きく以下の項目に分けられます。
・日常生活費
・介護サービス費
・その他(看取りや医療連携などの加算)
日常生活費は、賃料・食費・光熱費・おむつや日用品などが該当します。「おむつは持ち込めるのか?」といった細かな条件は施設によって異なるため、施設ごとに確認しましょう。
介護サービス費は、入浴介助や排せつ介助といった介護サービスにかかる費用です。介護保険が適用されるため、自己負担は1~3割程度となります。
なお地域や要介護度・ユニット数などによって、月額利用料は変動します。資料請求や施設への問い合わせを行い、比較検討するよう心がけましょう。
④長年住んできた地域に住み続けられる
グループホームのメリット4つ目は「長年住んできた地域に住み続けられること」です。
グループホームは2006年の介護保険法改正により、「地域密着型サービス」に位置づけられました。
本制度は「住み慣れた地域で過ごし続けること」を目的とした制度です。これにより「施設と同一の市区町村に住民票がある」ということが、入居条件に加えられています。
長年住んできた地域から離れずに生活できるのは、グループホームならではのメリットと言えるでしょう。
グループホームと有料老人ホームの違い
ここからはグループホームと有料老人ホームの違いを解説していきます。
どちらも介護を必要とする高齢者を対象にした施設です。そのため「何が違うのか?」「どちらに入居すべきか?」と迷ってしまう方が多いのではないでしょうか?
・入居条件の違い
・介護、看護ケアの違い
・費用感の違い
上記の3点から、グループホームと有料老人ホームの違いを詳しく見ていきましょう。
①入居条件の違い
グループホーム・有料老人ホームの違い1つ目は、「入居条件」です。
グループホームと有料老人ホームでは、入居条件に以下のような違いがあります。
・グループホーム…要支援2以上、認知症の診断証明書を所持、施設と同地域に住民票あり
・有料老人ホーム…高齢者全般が入居対象
有料老人ホームは主に民間企業が運営母体であるため、施設によって入居条件が大きく異なります。「自立」「要支援1~要介護5」など、対象者の幅は広いです。
また特徴に幅があるため、選ぶのが難しいというデメリットがあります。
認知症に特化しており、地域との交流や家庭的な生活を送りたい方は、グループホームの方がメリットは大きいでしょう。
②介護・看護ケアの違い
グループホームと有料老人ホームの違い2つ目は、「介護・看護ケア」です。
多くの有料老人ホームでは看護師が常駐しており、日々健康管理が行われています。
医療機関との連携や、定期的な検診・訪問治療などを実施する施設も多いです。
一方グループホームでも、職員によるバイタルチェック等は実施されます。「経管栄養」「痰吸引」といった医療行為の実施状況は各施設で異なるため、事前に問い合わせましょう。
他にも下記のような取り組みにより、健康管理や医療処置に関して体制を整えているグループホームも増えています。
・看護師の雇用
・訪問看護事業所との提携
③グループホームとの費用感の違い
グループホームと有料老人ホームの違い3つ目は、「費用感の違い」です。
|
グループホーム |
有料老人ホーム |
初期費用 |
0~数十万円 |
0~数千万円 |
月額利用料 |
10~15万円 |
20~数百万円 |
初期費用・月額利用料ともに、グループホームの方が安くなる傾向が高いです。
グループホームの初期費用は、多くが0円~数十万円ほどとなっています。いっぽう有料老人ホームの初期費用は、施設によってかなり差があります。
またグループホームの月額利用料は、10~15万円程度であるケースが多いです。
一方有料老人ホームは、月額利用料も施設によって差が大きくなっています。月額利用料の内訳は賃料や食費・水道光熱費などです。
なお高級有料老人ホームの場合、「入居一時金だけで一億円」「月額利用料は200万円」などを超えることもあります。
価格帯やサービス内容が統一されやすいグループホームと違い、有料老人ホームは以下のような複数の観点に気を配る必要があると言えるでしょう
・自分に合った価格帯か?
・多種多様なサービスのうち必要なものは?
・施設ごとの特長は?
グループホームの選び方
グループホームの選び方について、以下2点を解説していきます。
・資料請求による情報収集
・施設見学と見学のポイント
情報収集が長引いてしまうと、情報の整理がつかず、自分や家族に合った施設を選べなくなる可能性があります。
2つのポイントを押さえ、スムーズに施設を選んでいきましょう。
①資料請求による情報収集
まずは各施設から資料請求を行います。下記のポイントを中心に、基本的な情報を収集しましょう。
・施設の概要(入居者の平均年齢や職員数など)
・施設の特徴(1日のスケジュールや認知症の予防・改善状況など)
・介護、医療体制
・職員の教育、研修体制
・運営会社の規模や方針
複数の施設情報を並べることで、相場がわかりやすくなります。
「職員数が極端に少ない」「職員の教育・研修が少ない」など、気になる点をメモに残し、施設見学の際に確認しましょう。
なお資料請求は施設のHPや、直接電話することで取り寄せが可能です。
②施設見学と見学のポイント
気になる施設をピックアップしたら、施設見学を必ず行いましょう。広告用の資料だけではわからない、実際の雰囲気をみることができます。
なお見学の際は資料請求で気になった点に加え、以下の3点を見るのがオススメです。
・入居者の様子
・職員の対応や雰囲気
・私物の持ち込みは可能か
入居者や職員が表情豊かであり、多くコミュニケーションをとっている施設は、入居後も安心して過ごせる可能性が高いです。
逆に淡々と時間を過ごし、入居者が個室にこもっているような施設には注意が必要です。
スケジュールがマニュアル化されており、場合によっては1人1人に寄り添ったサービスを提供していない可能性もあります。
入居への安心感を高められるよう、「私物の持ち込みは可能かどうか」と併せて確認してみてください。
グループホーム選びの参考にしたい「運営推進会議」について
「運営推進会議」は、地域密着型サービスの質を確保することを目的として設置されている会議です。
・利用者や家族
・町会役員ケアマネジャーなど地域の代表者
・市役所や区役所の職員
・地域包括支援センターの職員
…などの構成員が、サービス内容やイベント・事故事例などの報告を行っています。
実際に会議に参加したり、施設のHPから「運営推進会議の議事録」を参考にしたりすることで、パンフレットには掲載されない内部情報を把握できます。
グループホーム入居前に知っておきたい注意事項と入居までの流れ
グループホームへ入居を検討する際、「どうやって入居するの?」と不安を覚える方は多いと思います。
そこでここからは、
・グループホーム入居前に知っておきたい注意事項
・入居までの流れ
…をわかりやすく解説していきます。
入居後に「こんなはずではなかった…」と後悔することのないよう、事前に注意事項を押さえましょう。
グループホーム入居前に知っておきたい注意事項
グループホーム入居前に知っておきたい注意事項は以下の3つです。
・入居には住民票が必要
・入居手続きは各施設で行う
・入居待ちになる可能性もある
入居する際は、施設と同じ住所に住民票が登録されている必要があります。その条件を押さえたうえで、施設と直接手続きを行ってください。
また少人数ゆえ、施設に空きがない可能性もあります。空きがない場合は、数か月ほど入居待ちになるケースもあります。
早め早めに資料請求や見学を行い、介護の負担を軽減できるよう動き出しましょう。
申し込み・契約・入居までの流れ
グループホームへの入居手続きは、原則として各施設で直接行います。
入居までの一般的な流れは以下のとおりです。
見学や面談
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入居申し込みと必要書類の提出
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入居可否の決定
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入居契約
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引っ越しや入居準備
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入居完了
施設ごとで流れに細かな違いはありますが、手続き時に「入居者本人や家族の意向をくみ取ってくれるか」を確認しましょう。
不安を解消してくれるかどうか確認することで、「ニーズに応えてくれる施設」だと判断できます。
また手続き時には「住民票」「認知症の診断書」「所得証明書」「本人確認書」などの書類が必要となります。
書類の準備には時間がかかるため、早めに動き出しましょう。
まとめ
グループホームは認知症の高齢者に特化し、アットホームな環境で介護サービスを受けられるのがメリットです。
住み慣れた地域で過ごせるという魅力もあるため、高齢化の進む日本では需要が高まっています。
住民票の登録や要介護度などの条件に注意しつつ、早め早めの準備を心がけてみてください。