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認知症とは? 症状や治療・予防方法まで徹底解説

2021/08/11

介護

「もの忘れが多く、もしかしたら家族が認知症かもしれない…」
「家族が認知症の診断を受けたので、今後どうなるのか不安…」
「認知症の原因や予防法を知り、早めに対策したい」

家族が認知症と診断されたり、認知症の疑いがあったりすると「どうしたらいいの?」と不安な気持ちでいっぱいになると思います。

認知症とは、脳の神経細胞が壊されることで発生する症候群です。
2021年現在は明確な治療法がありません。高齢化の影響で年々認知症患者の数は増加しており、研究が進んでいます。

そこで今回は認知症の基礎から今ある治療法まで、一つひとつていねいに解説していきます。

認知症とはなにか理解し、漠然とした不安を減らしていきましょう。

認知症とは

「家族の様子がおかしい」と感じたとき、認知症を疑う人は多いでしょう。

しかし、認知症とひとことで言っても、原因や症状・種類はさまざまです。認知症の理解を深めることで、気持ちの整理や今後の対応に役立ちます。

・認知症の概要
・認知症の原因
・認知症の症状
・認知症の種類
・認知症と「もの忘れ」の違い

まずは上記のような認知症の基本を整理し、漠然とした不安を減らしましょう。

認知症の概要

認知症は、老いや脳に関する症候群の1つです。

何らかの原因で脳細胞が壊されたり、働きが悪くなったりすることで、認知機能の低下や日常生活全般に支障が出る状態をいいます。

 

 

出典:厚生労働省「認知症の人の将来設計について」

日本では、年々認知症高齢者の数が増加しています。
厚生労働省の発表によると、2012年時点での認知症高齢者の数は462万人、2025年には約700万人と、高齢者の5人に1人が認知症になると推計されています。

また認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」は、2012年時点で約400万人いるというデータがあります。

2025年には、高齢者の3~4人に1人が認知症ないしは認知症の前段階という時代になる可能性が高いです。

さらに認知症の増加にともない、「介護離職」や「介護士不足」も社会問題となっています。

「認知症は身近な病気である」という認識とともに、原因や症状について正しく理解することが重要です。

認知症の原因

認知症を引き起こす原因は70種類以上あるといわれています。

認知症の多くは脳の神経細胞が壊されたり、働きが悪くなったりすることで発生します。しかし、脳以外の病気によって発症することもあり、原因は明確になっていません。

家族がどの種類の認知症かを把握し、それぞれの原因について理解を深めましょう。

認知症の症状

認知症の症状は時間をかけて進行し、大きく分けて3つの段階があります。

① 初期
② 中期
③ 後期

また認知症の症状は「中核症状」「行動・心理症状(周辺症状)」の2つに分けられます。

「中核症状」とは、脳の病変によって引き起こされる症状のことです。記憶力の低下や失語・失認といった症状が該当します。

「行動・心理症状(周辺症状)」はBPSDとも呼ばれ、「精神症状・行動の異常」に関する症状です。
妄想・抑うつといった精神症状や、徘徊・暴力など行動の異常があります。

初期段階の症状

認知症の初期段階に発生する主な「中核症状」は以下のとおりです。

・数分、数日の短期記憶を失いやすくなる(記憶障害)
・考える時間と手間がかかるようになる(判断力障害)

続いて、初期段階における主な「行動・心理症状(周辺症状)」は以下のとおりです。

・イライラする
・不安になる
・意欲が低下する
・無関心、無気力になる

本人がもの忘れを自覚しているケースも多く、それに伴い不安やイライラといった周辺症状が増えます。

身の回りのことを行う能力は残っており、家族や周囲のサポートがあれば、日常生活に大きな問題はありません。

中期段階の症状

認知症の中期段階に発生する、主な中核症状は以下のとおりです。

・今いる場所がわからない(見当識障害)
・時間や季節がわからない(見当識障害)
・計画を実行することが難しくなる(実行機能障害)

続いて、中期段階に起こる主な「行動・心理症状(周辺症状)」は以下のとおりです。

・不安になる
・暴力的になる
・幻覚や妄想
・徘徊
・失禁

食べ物ではないものを食べ物と判断したり、駅や自宅の場所がわからなくなったりなど、「見当識障害」とよばれる症状が出てきます。

混乱や不安が大きくなり、本人や介護する家族にとっても難しい時期といえます。

後期段階の症状

認知症の後期段階に発生する、主な中核症状は以下のとおりです。

・家族や知り合いがわからない(見当識障害)
・失語、失認、失行

後期段階の「行動・心理症状(周辺症状)」では、初期・中期と同様の周辺症状が現れます。ただし、「わからないことがわからない」という段階に入るので、気持ちは穏やかになることが多いです。

・言葉の理解や表現が難しくなる「失語」
・目から得た情報を判断できなくなる「失認」
・物事の手順がわからなくなる「失行」

上記のような中核症状が目立ち始めるのも、中~後期の特徴です。

ここまで紹介した中核症状・周辺症状は個人差があります。場合によっては「後期の症状が初期からあらわれる」というケースもあるので、注意しましょう。

認知症の種類

認知症の多くを占めているのは、以下の4種類です。

① アルツハイマー型認知症
② 脳血管性認知症
③ レビー小体型認知症
④ 前頭側頭型認知症

1つ目の「アルツハイマー型認知症」は、認知症全体のおよそ半数を占めています。記憶をつかさどる「海馬」を中心に、脳全体の萎縮がみられる認知症です。

明確な原因や治療法は判明していませんが、特殊なタンパク質の蓄積によって脳細胞の損傷や神経伝達物質の低下といった症状がみられます。

2つ目の「脳血管性認知症」は、脳の血管がつまったり破れたりすることで、脳に障害がおこる認知症です。脳血管性認知症は生活習慣病の人がなりやすいという特徴があり、予防可能な認知症といえます。

3つ目の「レビー小体型認知症」は、以下のような原因によって発症します。

・レビー小体(特殊なタンパク質のかたまり)が大脳皮質の神経細胞に蓄積
・神経細胞が変化・死滅する

初期症状にリアルな「幻視」が現れ、被害妄想やうつなどの症状が生じやすくなります。

4つ目の「前頭側頭型認知症」は、脳の前頭葉と側頭葉が障害を起こすことで発生する認知症の総称です。ほかに「意味性認知症」「進行性非流暢性失語」の2タイプがあります。

規則を守らなかったり、同じ言動を繰り返したりと、特徴的な症状がみられます。

また、紹介した以外にも認知症の原因疾患として、「正常圧水頭症(※1)」「脳腫瘍(※2)」「慢性硬膜下血腫(※3)」「甲状腺機能低下症(※4)」などがあります。

原因疾患によっては認知症が治るケースがあるため、正しく理解することが重要です。

(※1)脳の髄液がたまり、脳室という箇所が拡大して圧迫する病気
(※2)頭蓋内にできる腫瘍
(※3)事故等の外的要因によって血液がたまり、血種となる。血種が脳を圧迫することで、認知症につながる
(※4)甲状腺ホルモンの分泌が低下することで、認知症に似た症状が起きる

認知症と「もの忘れ」の違いについて

もの忘れは「加齢によるもの」と「認知症によるもの」の2つに分けられます。

【加齢によるもの忘れの特徴】
・体験したことの一部分だけを忘れる
・自分で忘れたことを自覚できている
・ヒントにより思い出せる
・もの忘れの度合いが進行しない
・日常生活に支障はない

【認知症によるもの忘れの特徴】
・体験したことを丸ごと忘れる
・自分で忘れたことを自覚できない
・ヒントがあっても思い出せない
・もの忘れの度合いが進行する
・日常生活に支障がある

加齢によって忘れやすくなったり、新しいことを覚えるのに時間がかかったりするのは、老化現象のひとつです。

しかし、もの忘れによって日常生活に支障が出るなど極端にもの忘れがひどくなったりする場合は、認知症を疑う必要があります。

「加齢によるもの忘れかどうか」が早期発見に役立つため、家族がどちらに該当するのかチェックしてみてください。

認知症によるトラブル例

認知症の症状により、さまざまなトラブルへつながる可能性があります。

主なトラブル例は以下のとおりです。

・「妻(夫)が浮気している」「財布を盗んだ」などの発言をする (周辺症状の被害妄想)
・部屋から出てこなくなり、不潔になる(周辺症状の抑うつ・無気力)
・家族や知人に暴力をふるう(周辺症状の暴力・暴言)
・1日中ウロウロと家のなかを徘徊する(周辺症状の徘徊)
・自宅がわからず、帰宅できない(見当識障害)
・長年続けていた仕事ができなくなり、上司から注意される(記憶障害・実行機能障害)
・万引きや大声を出すなど、社会性がなくなる(前頭側頭型認知症)

場合によっては警察や近隣住民とのトラブルに発展するケースもあります。

そのため、認知症であることや認知症の疑いがあることを周りに早めに伝えましょう。「周りには言いづらい…」という不安もあると思いますが、トラブルを未然に防ぐことが重要です。

【認知症】早期発見の重要性について

認知症は「早期発見」が重要です。

早期発見することで、「体調面」「精神面」のメリットが得られやすくなります。

①体調面のメリット

早期発見による体調面のメリットは以下のとおりです。

・治せる可能性がある認知症において、完治の可能性が高まる
・認知機能の低下スピードを抑えられる
・治療薬の早期投与により、神経細胞の破壊等を少なくする

「正常圧水頭症」「脳腫瘍」などが原因疾患の治せる認知症では、早期発見が完治の可能性を高めます。

ほかにも認知機能の低下をやわらげたり、治療薬によって症状の進行を遅らせたりと、早期発見のメリットは多いです。

ただし、治せない認知症では、早期発見によって症状が完治するわけではない点に注意しましょう。

②精神面のメリット

続いて精神面のメリットは以下のとおりです。

・時間をかけて心の準備ができる
・環境や家族の気持ちの整理がつき、認知症に対して冷静に対処できる
・医療や介護サービスの情報収集ができ、安心感が高まる

早期発見によって認知症と向き合える時間が増え、安心感や冷静さを保ちながら生活を送れます。

本人はもちろん、「家族や周囲の人が心の準備をできる」という点でメリットは大きいです。

認知症のチェック方法

認知症かどうかチェックする方法は、主に以下2つの方法があります。

① 病院で検査する
② 家族がチェックする

早期発見につながるよう、認知症のチェック方法について詳しく見ていきましょう。

病院で検査する

認知症をチェックする方法1つ目は、「病院での検査」です。

病院では主に以下の流れで検査が進みます。

① 医師による問診(家族も面談あり)
② 身体検査(血液検査、心電図検査など)
③ 認知機能テスト・脳画像検査含む

認知機能テストには「改訂・長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」「時計描画テスト」などがあります。日付の確認や計算等のテスト、時計を描くといった作業から検査を行うものです。

正確な診断ができるよう、認知機能テストでは家族が助け舟を出さないよう注意しましょう。

また脳の形や病変を調べるべく、「CT」「MRI」などの脳画像検査も実施されます。

さまざまな検査によって認知症と診断された場合、治療へと移る流れです。

家族がチェックする

認知症をチェックする方法2つ目は、「家族がチェックすること」です。

中核症状・周辺症状をチェックすることで、早期発見につながります。具体的なチェック内容は以下のとおりです。

・同じことを何度も聞く
・忘れ物が極端に多くなった
・イライラしていることが多い
・人の名前や顔をよく忘れる
・家事や仕事のやり方、順番を忘れることが増えた
・日付や曜日がわからない
・「財布を盗まれた」「浮気している」などの被害妄想がある
・物事に無関心

上記を含めて「以前とは明らかに違う行動」をとっている場合、認知症の疑いがあります。本人や家族のために、早期検査が有効です。

ただし「認知症」という言葉を出して検査を薦めると、本人の不安やストレスにつながりかねません。「一緒に健康診断へ行こう」といった形で、直接的な伝え方を避けるのがおすすめです。

認知症の治療・予防方法

認知症の治療・予防には、「薬を使った治療・予防法」「薬を使わない治療・予防法」があります。

どのような方法があるか理解し、治療・予防の選択肢を増やしましょう。

病院での治療法

病院での治療法には、「薬物療法」「非薬物療法」の2種類があります。

①薬物療法

薬物療法で使用される薬は、大きく分けて以下の2つです。

・認知症の進行を遅らせる薬
・中核症状・周辺症状を軽減させる薬

認知症の進行を遅らせる主な薬には、神経伝達物質を助けたり、神経細胞の破壊を防いだりする「コリンエステラーゼ阻害薬」があります。

また、中核症状・周辺症状を軽減させる薬には、幻覚や妄想等をおさえる「抗精神病薬」や、興奮を一時的におさえる「抗けいれん薬」、うつ症状に効く「抗うつ薬」などがあります。

これらを使用する際には、以下2点に注意しましょう。

・副作用がある
・認知症を完治させるための薬はない(2021年現在)

②非薬物療法

薬物療法以外に、薬を使用しない「非薬物療法(リハビリテーション療法)」があります。

非薬物療法の内容はさまざまで、病院外の施設や民間の団体で実施するケースも多いです。

・回想法…懐かしい思い出を語り合うことで、脳の機能を活性化する心理療法
・リアリティ・オリエンテーション…日時やできごとを聞いたり、話したりすることで認知機能の低下を遅らせる
・身体能力訓練…立ち上がり、起き上がりといった運動機能を向上させる
・集団作業療法…グループで音楽や創作活動といった作業をし、心身機能の向上をはかる
・音楽療法…音楽を聴いたり、歌ったりすることで気持ちを安定させる
・アニマルセラピー…犬や猫といった動物と触れ合うことで、心の安定をはかる

上記のような非薬物療法では、認知症による孤独・不安を防ぐことで、認知機能の低下を遅らせることができます。

また、一般的なリハビリと違い、「心の安定」「自信をつける」といった目的のものが多いです。

家族ができること

認知症と診断された場合、まずは家族が本人の気持ちを理解しようとする姿勢が重要です。

・大切な人や思い出を忘れてしまう不安
・家事や仕事ができなくなるストレス
・自分が自分でなくなってしまうことの恐怖

上記のような不安・恐怖を想像し、本人の自尊心を傷つけないことが大切になります。

具体的には、「同じことを言われても、繰り返し返答する」「妄想や幻覚に対して共感し、相手の世界を受け入れる」といった接し方が有効です。

認知症介護には施設の手を借りるのも有効

家族の負担が大きくなる場合、認知症介護に特化した施設サービスを利用するのも有効です。
介護職員に手助けしてもらうことで、本人だけでなく家族も「自分らしい生活」を保ちやすくなります。

施設介護サービスを利用する主なメリットは以下のとおりです。

・コミュニケーションをとる機会が増える
・認知症に効果的な「食事」「睡眠」「レクリエーション」などのサービスが受けられる
・24時間体制で介護を受けられる
・介護保険制度の利用で、自己負担額が少なくなる(原則1割)

一方、施設へ環境が変わることで、認知症が進行するというデメリットも起こりえます。しかし、「福祉用具を増やす」「食事を変える」といった変化でも同じことが起こりえるので、一概にデメリットと言い切ることはできません。

「他利用者と交流することで笑顔が増えた」といった事例もあるので、まずはどのような施設があるのか情報収集をしてみましょう。

まとめ

認知症は明確な治療法がなく、また、多くの原因があります。

認知症に対する情報を整理することで、「私の顔を忘れたのは病気のせい」「人格が変わってしまったわけではない」といった解釈ができるようになります。

認知症の方に寄り添い、正しく理解することが、本人や家族の「自分らしい生活を維持すること」につながります。

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